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近未来に日本でも実現するかもしれない「給料電子マネー振込」

2019/09/09

 

近未来に日本でも実現するかもしれない「給料電子マネー振込」

近年、交通系ICカードやスマホアプリなどにチャージした電子マネーで、商品代金を支払える店舗が増えています。お金を使う場面ではキャッシュレス化の波を肌で感じることが増えた一方、お金を受け取る場面では、未だに銀行口座を経由してお金を受け取っている人が大半でしょう。しかし、諸外国ではすでに「給料電子マネー振込」が導入され始めています。フィンテック後進国の日本にも同じように電子マネーで給料が振り込まれる仕組みが普及する日は来るのでしょうか?

諸外国に比べて進まない日本の現金離れ

日本政府は、「未来投資戦略 2017」において2027年までの10年間でキャッシュレス決済比率を4割程度に引き上げるという目標を掲げています。2015年のデータで、日本のキャッシュレス決済比率は約2割に留まっており、これは韓国の約9割をはじめアメリカやヨーロッパの4~5割と比べても、大きく後れをとった数値です。日本でキャッシュレス化が進まない要因は一体どこにあるのでしょうか?

現在の日本では、多くの企業が口座振り込みによって従業員に給与を支払っています。そのため、給与で現金支払いの買い物をするには、銀行口座から現金を引き出す必要があります。もし、給与が特定の電子マネーに直接チャージされるようになれば、キャッシュレス決済比率は格段に向上するでしょう。

しかし、労働基準法の24条1項では、給与は原則的に現金でかつ従業員に手渡しすることが規定されています。給与支給の主流である銀行振り込みでさえ、実は従業員の同意を得ることを条件とした例外的な処置なのです。確かに現金以外で支給した給与がハッキングやシステムのエラーによって消えてしまうリスクには敏感になるべきですが、70年も前に制定された古い法律が効力を発揮しているうちは、キャッシュレス決済比率の大幅向上は見込めないのかもしれません。

給料電子マネー振り込みが進むアフリカ

給料電子マネーの先進国はアフリカであることをご存知でしょうか。ごく一部の人しか銀行口座を持っていないアフリカのケニアでは、給与を電子マネーとして携帯電話に振り込む方式を採用する事業者が増えています。ケニアでは早くから携帯電話を使った送金が個人間で行われてきたため、現金以外で給与が支給されることに抵抗がないのでしょう。また、治安が悪い場所では、電子マネーで給与を管理することが、現金を持ち歩くより、身の安全を守ることにもつながっています。

アメリカでは、小切手が給与支給の主流でしたが、近年では銀行口座を通さずに給与を受け取ることができる「ペイロールカード」が普及し始めています。ペイロールカードは、会社が銀行を介さず従業員のカードに給与を直接入金し、従業員はそのカードを使って買い物ができるという仕組みです。この仕組みは小切手による手続きの煩雑さを解消したことで、現在急速に広がりをみせています。

日本では東京都やフィンテック企業がこれらの仕組みに目をつけ、2018年6月の国家戦略特別区域諮問会議にて「携帯電話の電子財布に賃金をデジタルで支払いを可能とするキャッシュレス規制緩和」と題したプレゼンが行われました。厚生労働省は当時「破綻時に資金が全額保全されないケースもある」としてこの提案を一蹴していますが、2018年10月末には、厚生労働省が電子マネーでの給与支払いを可能とするよう規制を見直す方向で検討を進めていることが明らかになっています。

決して遠い未来ではない?!企業給与の電子マネー化

給与の電子マネー支給は、外国人労働者の働きやすさを向上させる役割も担っています。日本で外国人が銀行口座を開くには、さまざまな条件を満たす必要がありますが、現行の制度では口座を開設できない外国人労働者も多く、給与支給の手続きが煩雑です。外国人労働者を積極的に受け入れるのであれば、銀行口座を介さない給与支給の仕組みを確立することが急務と言えるでしょう。

労働者保護の観点から長い間慎重に議論されてきた電子マネーでの給与支払いですが、昨今は日本でもその有益性や合理性が評価され、実用化に向けた検討が大きく進んでいます。口座振り込みの例を考えると、今後は「従業員から同意を得た場合にのみ」という但し書きつきで、プリペイドカードや、スマートフォンの資金決済アプリなどに企業が入金する仕組みが認められていくのではないでしょうか?

テクノロジーが発展することで遠くない将来にはお金が硬貨や紙幣による取引ではなく、すべて電子マネーで決済される時代が来るかもしれません。その場合、労働者1人ひとりが自身の財産の管理により高い意識を持つことが重要であり、電子マネーで給与が支給されるようになっても財産を守れるよう、今後もフィンテックの安全を担保する技術に注目することが大切です。

 

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2019/09/09 更新

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