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“個客”志向で関係強化を図る金融マーケティング

2019/09/02

 

“個客”志向で関係強化を図る金融マーケティング

金融テクノロジーの発達・普及により、いまや大手IT企業などが業界の垣根を飛び越え、続々と金融業界へ参入する時代になりました。生き残りをかけた金融機関が今もっとも注力しているのが顧客1人ひとりへの適切なサービス提供による利用満足度の向上、すなわち“個客”志向による関係強化です。今回は、その実現に向けて活発化する金融マーケティングの変遷と現在について紹介します。

マーケティングという概念がなかった金融業界

そもそも金融業界には、銀行という機関が誕生して以降、1990年になるまで「マーケティング」という概念が存在しませんでした。長らく銀行の業務の根幹となっていたのは、「個人顧客からの預金」と「法人への融資」の2つ。特に大企業を中心とした法人との結びつきが強かったため、戦略的なマーケティング活動は必要とされてこなかったのです。また、従来は行政の規制も厳しく、マーケティングによって銀行ごとに差別化を図り、独自サービスの拡充を検討することは困難な状況にありました。

しかし、時代は移り変わり、日本の好景気を支えたバブル経済は崩壊。巨額の不良債権を抱えた銀行は経営が行き詰まり、倒産を免れられなくなりました。企業の資金調達のあり方も変容し、かつて銀行にとって優良な顧客であった大企業が離れていくという現象が加速しました。

こうした金融業界全体の変化からリテール(個人向け)事業へのシフトチェンジを余儀なくされた銀行は、従来のビジネスモデルから脱却するため、各行が試行錯誤せざるを得なくなりました。さらに時代は変化し続け、規制緩和も推進された現在、金融業界もさまざまなニーズを持った顧客と向き合うため、マーケティングの重要性が高まっているのです。

マーケティングにおいて重要になる“個客”志向

2007年頃からはテクノロジーの進化がますます著しくなり、金融業界においても膨大な顧客データを活用したデジタルマーケティングへの取り組みが求められるようになりました。特にここ数年のFinTechの著しい発展は、金融マーケティングを新たなステージへと導いています。

こうした状況の中で、重要な視点となるのが“個客”志向です。新規顧客を獲得したり、既存顧客のエンゲージメントを高めたりするには、顧客1人ひとりの異なるニーズや背景を読み取り、良好な関係構築の方法を模索する必要があります。その実現を目指すため、各金融機関は多種多様なテクノロジーを駆使して、より“個客”にフォーカスした取り組みを行っています。

取り組みの一例としては、顧客ニーズの多様化・細分化に対応するためのオムニチャネル導入にともなう取引情報の統合などが挙げられるでしょう。顧客が自分自身のライフスタイルなどに合わせて、ストレスなく適切なサービスを利用することができるような環境整備が進んでいます。

“個客”へのサービスで金融機関を選ぶ時代に

繰り返しになりますが、各金融機関は独自のマーケティングによって“個客”に向き合うサービスを展開し始めています。その一方で、冒頭でも言及したとおり、近年は異業界の有名企業が金融ビジネスに参入するケースも決して珍しくなく、中にはサービス開発の豊かなノウハウを持った企業も多く存在します。

いまや金融機関はそれらの企業とも肩を並べなければならなくなり、ますます顧客から“選ばれる”ことが不可欠になっているのです。裏を返せば、手厚いサービスやユーザビリティを意識しない金融機関は淘汰される時代が到来したとも言えるでしょう。

利用する側の立場で考えると、充実した金融商品はもちろん、自分自身のニーズを満たすサービス=付加価値を提供してくれる金融機関を選択することが、豊かな暮らしの実現につながります。そして利用者に対して豊富な選択肢が用意されている現在、それらを正しく理解して意思決定するためには利用者側のリテラシーも重要になってくるかもしれません。

 

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2019/09/02 更新

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