テクノロジーの時代に求められる課題設定力とは
AI、IoT、FinTechなど近年ではテクノロジーの活用に関する話題が絶えません。そうしたテクノロジーの進歩により確実に人々の生活は豊かになってはいますが、革新が起こっている現代だからこそ、人々は未来に待ち受けている課題にも目を向ける必要があります。なぜならAIなどのテクノロジーは、現行の課題を解決するツールであるだけで、その先に噴出する課題を見い出す「課題設定」は行えないからです。テクノロジー全盛の時代だからこそ、人々には課題設定力が求められます。
テクノロジーの進歩で実現できる課題解決
「環境に適応する」という地球に存在する種の進化とは異なり、「自分たちが暮らしやすい環境を整える」という革新を常に起こしてきた人類。農耕・牧畜主体の時代から石炭、蒸気機関を動力源とする軽工業の第1次産業革命を経て、現代ではAIやIoTなど革新的新技術を結集した第4次産業革命の時代にまで発展し続けてきました。
人類には改革を繰り返し、課題を常にその時代の最先端テクノロジーで解決してきた歴史があります。森林を開拓するためには鍬(くわ)や鋤(すき)を、歩行での移動に時間がかかるのであれば車を、遠隔での情報交換のためには通信機器を開発。その時代の“不便という名の課題”をクリアし、進歩を続けています。つまり、歴史を振り返ると不自由であればあるほど、その状況を糧にして乗り越える原動力としてきたのです。
ではテクノロジーの発展が顕著であり、従来とは比べ物にならないほど便利な世の中になった現代では、人々は今の暮らしに課題を感じることはあるのでしょうか?その答えはYesではありますが、不便だったころに比べて生きることに課題を感じるシーンが少なくなってきているのが現状です。だからこそ、世の中をさらに便利に発展させていくためには、新たな課題を見つけ、次なるステップを踏むための「課題設定」を行うことが求められるでしょう。
課題設定があってこその課題解決
生きていくうえで課題は常に噴出するものではありますが、そもそも課題と認識することができなければ、発展は見込めません。そのため、テクノロジー全盛で便利な時代であっても、現状の暮らしや仕事において何が課題でどこをクリアにすれば先が見込めるのかを常に考える必要があるでしょう。そして、多くの人は課題解決に意識が傾きがちですが、課題の本質をしっかりとらえることが先決となります。だからこそ何事においても前進を見込むのであれば課題設定が肝なのです。
ビジネスシーンにおいても課題設定が上手い人は出世が早いと言われています。その理由としては、課題設定ができれば、真に解決すべき課題を抽出してその解決のために行動することができるからです。そして、明確になった課題はテクノロジーを駆使して解決に導くことによって、今までの何倍ものスピードで多くの物事を処理することも可能になります。そうした効率的な人が出世できるのはなんら不思議なことではありません。
課題設定の重要性をわかりやすく学校のテストで例えてみましょう。優秀な学生はテストの内容をきちんと把握して正しい解答を導くことができます。しかし、テスト問題を作る先生は学生の思考力を踏まえたうえでどのレベルの問題なら解けるか、あるいは正答に導くことができないのかを把握していることが不可欠です。つまり、「テスト問題を作る=課題設定する」ことは、「問題を解く=課題解決する」ことよりもはるかに難易度が高いと言えます。
未来を築くのは論理的思考力ではなく創造性
論理的思考で現状の課題を打破する突破力は、もちろん現代においても不可欠な力です。しかし、アインシュタインやダ・ヴィンチのように時代に革新をもたらしてきた寵児たちは、その時代の常識のはるか上を行く創造性を兼ね備えていました。現状を維持するのであれば目の前の課題を解決し続けることでなし得ることができるかもしれませんが、もう一段階上を目指すのであれば次なる課題を設定する創造性が求められるでしょう。
事実、今ある課題の解決は人手をかけずとも、AIやIoTなど進歩したテクノロジーの活用で実現できる目途が立っています。しかし、解決すべき課題を設定して、より良い未来を築いていく工程は人の創造性にかかっていると言っても過言ではありません。テクノロジー全盛の時代だからこそ、労働者一人ひとりが仕事にさらに深く向き合って現状の課題の本質を見極め、次なる課題を創造することが重要になります。未来への足掛かりとなるのは、そうした課題設定力なのです。