人は年を取ると身体に何かしらのトラブルを抱える可能性が高まります。加齢や病気によって足腰が徐々に弱まり、最終的には自分で歩くことができなくなる方もいます。そうした身体の弱った方の介護を担当するのが介護福祉士です。高齢者や障害者の方の生活を支えるという役割は今後、さらに強まっていくことでしょう。加速する少子高齢化社会において、介護福祉士はなくてはならない存在なのです。
社会貢献性が高い介護福祉士の仕事
介護福祉士の主な仕事は、高齢者や身体に障害のある人ができるだけ自立した生活を送れるよう、入浴や排せつ、食事などの介助を心身の状況に応じて行うことです。それ以外にも、介護を必要とする人の健康管理や家事援助、介護計画の作成、家族からの相談への対応、介護方法の指導など、求められる役割は多岐にわたります。介護福祉士は福祉の専門知識を持つ者として、現場で指揮をとるだけでなく、自ら率先して支援が必要な人の介助にあたる介護職のプロフェッショナルといえます。
介護福祉士の仕事というと、肉体労働でストレスも多い大変な仕事であるというイメージがありますが、介護される人の悩みと向き合い、家族に寄り添うこの仕事は、相手を笑顔にするやりがいも大きいものです。業務中は支援する人やその家族など幅広い世代の人と関わるため、相手の話を聞く力や相手を理解する力に秀でた人材が求められます。
介護福祉士になるには国家資格が必要
介護現場の中心的存在である介護福祉士は、介護職の中で唯一、国家資格を必要とする職業です。この資格は1987年に、深刻化する日本の少子高齢化に備えて制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」と同時に誕生しました。2011年の法改正では、介護福祉士の業務に医療行為である喀痰(かくたん)吸引と経管栄養が追加されるなど、介護福祉士に期待される役割はますます広範囲になっています。
介護福祉士の国家資格を取るためには、指定された養成施設を卒業するか、福祉系の高校で指定の科目・単位を取得し、卒業後の試験に合格するなどのルートが一般的です。しかし、他業種からの転職を考える場合などは、指定の学校を卒業していなくても特別介護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービスセンターやグループホームなどで3年以上の実務経験を積み、実務者研修を修了することで国家試験の受験資格を得られます。
介護福祉士の資格を取得すると、介護施設のリーダーや介護長、施設長などのマネージャー職にキャリアアップする道が開けます。厚生労働省の調査によると、介護福祉士の平均給与は2014年度の全国平均で月22万円ほどですが、キャリアを積み上げることで収入増にも期待ができるでしょう。また、介護福祉士としての実務経験を5年以上積めば、介護のケアプランを作成するケアマネージャーへの転向も可能となり、現場を離れデスクワークに重点を置くなどの多様な働き方が選べるようになります。
少子高齢化で増加傾向にある需要
高齢化が深刻化する日本の介護現場では2025年には212~255万人もの介護職員が必要になるという概算が出されており、専門知識を持つ人材の確保が急がれています。介護職の人材不足は、社会福祉の水準の低下だけでなく、介護現場で働くスタッフの負担につながってしまうため、国は今後介護福祉士の上位に認定介護福祉士という専門職を新設し、労働環境や待遇の改善を進める方針です。
介護福祉士の国家試験の合格率は毎回60%前後で推移してきましたが、実務者研修が導入された第29回には、合格率が70%にまで上昇しました。介護福祉士は福祉の専門知識を勉強し、実務経験を積むことで、確実に取得できる資格になってきたといえるでしょう。国家試験は1年に一度筆記と実技に分けて行われます。通信教育の受講でも試験対策は可能なので、転職の選択肢の一つとして勉強を始めてみてはいかがでしょうか。
少子高齢化社会となり、要介護者層が増え続けている現在の日本において、介護福祉士が担うべき役割は決して小さくありません。社会貢献性の高い介護福祉士の仕事は、人のために働きたい方、責任感が強い方などに特に向いている職業といえるでしょう。