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仮想通貨が統一通貨に?フィンテックが世界をつなぐ可能性

2019/07/22

 

仮想通貨が統一通貨に?フィンテックが世界をつなぐ可能性

近年、ビットコインなどを筆頭に話題を呼んでいる仮想通貨ですが、決済手段として受け入れられるまでには、安全性の検証や法整備などのたくさんのハードルがあります。しかし、それらの課題が解決した暁には、仮想通貨がそれぞれの国の通貨に代わって、世界共通の通貨となる日が来るかもしれません。今回は仮想通貨が将来的に世界の共通通貨となり得る根拠を考えてみましょう。

世界共通通貨がなく各国でバラバラのワケ

現在、EUの「ユーロ」や、中米の一部で使える「東カリブ・ドル」などを除き、ほとんどの国が自国の通貨を使用しています。そのため、海外旅行の際は手数料を支払って手持ちの現金を両替しなければならず、貿易では円高が1円進むだけで億単位の損失が出ることも少なくありません。通貨が世界共通なら、こうした損失が生じることもありませんが、通貨を世界共通にすることには深刻なデメリットがあります。

独自の貨幣を持つ国の政府は、銀行の金利を上げ下げし、通貨の供給量を調整することで経済を安定させています。一昔前のギリシャは、不景気になると独自の通貨である「ドラクマ」を外国の通貨より安くし、輸出を増やすことで財政を維持していました。しかし、通貨をユーロに切り替えてからは財政を立て直す手段を失い、周辺国をも巻き込む経済危機に陥ってしまいました。

一方、中米のパナマでは、独自の硬貨「バルボア」の価値を1バルボア=1ドルとして米ドルに準拠させ、紙幣は米ドルのみを使用しています。パナマはアメリカとの経済的な結びつきが強く、経済規模も小さいために混乱なく米ドルを使用することができましたが、経済の構造が似ている国同士でないと、通貨の統一は難しいというのが大方の見方です。

仮想通貨が世界共通通貨になり得る可能性

他国と共通の通貨を使えば、国が通貨を発行しなくなることで国内経済を犠牲にするリスクが伴います。しかし、経済のグローバル化が進む中で、国をまたいだ送金に莫大な時間と手数料がかかる現在の貨幣システムは効率的ではないことも確かです。ビットコインをはじめとする仮想通貨を使えば、国際的な送金を短時間で行えるため、世界共通通貨になり得るのではないかと期待されています。

仮想通貨に使われているブロックチェーンという技術は、個人間の仮想通貨のやり取りを暗号化し、複数の台帳に分散させて記録するものです。この技術があれば銀行のような中央集権型の管理システムがなくても、安全にお金を送金できます。通常、通貨は供給量が多くなるほど価値が下がるものですが、仮想通貨は「半減期」というプログラムによって供給量が自動調整されるため、価値が意図的に操作されることもないと考えられています。

また、仮想通貨は通貨の価値が不安定な途上国であっても、自国の通貨を仮想通貨に変えておくことで資産を守ることができるという点も評価されています。仮想通貨はまだ、技術の発展に法整備が追いついていない段階ではありますが、世界中の人が仮想通貨を持てば、「通貨のボーダレス社会」が実現できるでしょう。

紙幣がなくなることで加速する通貨統一の流れ

日本は外国と比べて現金決済の割合が多く、キャッシュレス化に関しては大幅に遅れています。サービス業では、おつり用の現金を切らさないよう、常に大量の現金を管理していますが、今後の労働力不足が懸念される日本では、電子決済を一般的に浸透させて現金を管理する手間を省くことにより、生産性を向上させることが急務となっています。

日経新聞の2018年1月9日号に掲載された、フィンテックのイノベーションに関するロードマップでは、2030年ごろには世界的に紙幣が廃止され、国際的な送金を含む金銭のやり取りがデジタルで完結するようになると予想されています。紙幣が廃止されれば、電子マネーや仮想通貨などのテクノロジーで財産管理をするのが当たり前になり、経済のボーダレス化はどんどん加速するでしょう。

世界共通の仮想通貨で送金が可能になれば、個人が海外の会社と契約をして、労働した分の報酬を仮想通貨で受け取るという働き方も珍しくなくなるかもしれません。今後は、仮想通貨が国際的に普及することによって、働くフィールドも広がることでしょう。仮想通貨が統一通貨となる未来に備えて、自らの働き方を考えることが大切です。

2019/07/22 更新

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