“仕事が消滅する時代”に鍵となるエンプロイアビリティ
AIやIoTなどの最新テクノロジーの活用が進んだことにより、近年では単純業務の自動化が加速しています。仕事のあり方が変容するこれからの時代には、最新テクノロジーと共存できる人材が求められるようになるでしょう。そのため、労働によって価値を生むべき労働者が「雇われる力」(エンプロイアビリティ)を向上させるには、どんな努力が必要なのでしょうか?
雇用される能力「エンプロイアビリティ」
エンプロイアビリティとは、直訳すると「雇用される能力」のことであり、ある企業に継続して雇用される能力と、転職市場で評価される能力を包括する概念です。エンプロイアビリティという言葉が日本の公文書に初めて登場したのは、2001年のこと。21世紀が始まり、終身雇用や年功序列をはじめとする従来の働き方が見直され始めると、のちの転職を前提に会社を選ぶ人が増え、エンプロイアビリティを向上させることの重要性が認知されていくようになりました。
エンプロイアビリティを高めるには、どんな企業でも役に立つ普遍的な能力を鍛える必要があります。普遍的と言っても、書類作成や表計算などといった基本的な仕事はAIなどのテクノロジーで代替可能となっているため、労働者個人の能力として以前ほど評価される時代ではありません。今後は問題発見や解決の能力など、人間らしさを活かしたクリエイティブな能力が求められます。
また、今後はAIやIoTなどの新しい技術に対応し、柔軟に仕事ができるかどうかが、採用の際の重要な判断材料になることは間違いありません。労働者はAIなどの新しい技術に仕事をとられることを心配するのではなく、テクノロジーを問題解決に活用し、社内外でいかに価値を発揮していくかに思考をシフトする必要があるでしょう。
これからは価値を生める人材が評価される時代に
エンプロイアビリティを高めるためには、どこで何年働いたかではなく、今までの経験でどのような知識を蓄えたが重要です。どんな職種であれ、座学だけでは習得できない知識や技能を持っていることが武器になります。業務で身につけた「市場に関する知識」「ビジネスの人脈」は、働く環境が変わっても活用と更新を続けていきましょう。
また、働く場所が変わっても安定したレベルで成果を上げられることも、エンプロイアビリティの重要な要素と言えます。変化に素早く順応するために、コミュニケーション能力や対人関係構築能力も磨いていきましょう。プレゼンテーションや傾聴のスキルは、ビジネス書を読んだだけでは習得しにくいので、有能な人材の中に身を置いてノウハウを吸収する努力が大切です。
ビジネス感覚の優れた人の行動規範を見習えば、業務に対するモチベーションを高めることもできます。仕事への情熱はAIでは置き換えられない人間固有のものなので、今後の労働市場で価値を発揮するためには不可欠でしょう。能力の高いビジネスパーソンとの交流は、5年後、10年後のキャリアをマネジメントするためにも役に立ちます。
労働者一人ひとりが主役となることが理想
終身雇用、年功序列が当たり前だった時代は、会社の提示した要求をおとなしく受け入れられる能力もエンプロイアビリティの1つだったかもしれません。しかしこれからは、労働者が自らの価値を高め、働く環境を選ぶ時代です。「会社にとって都合の良い人材」になることではなく、「社会に新たな価値を生み出す人材」になることが本質的と言えるでしょう。
また、今後はどんな職種にもAIと人間の作業の整理を行う人材が必要になります。新しい技術を導入することが決まった瞬間に、新しい雇用が生まれると言っても過言ではありません。義務教育でプログラミングを学ぶ世代に後れをとらないよう、最新技術についての知見を能動的に集めることが大切です。
業務が自動化すればするほど、座学では習得できない専門性や対人スキルの高さが買われるようになる今後の労働市場。単純業務がなくなりつつある時代だからこそ、自身の知恵をフル活用できる人材が評価され、主役となれるのです。転職先で今と同等以上の処遇を得るために、自身のエンプロイアビリティを向上させていきましょう。