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従来機関とフィンテック企業の異業種連携の可能性

2019/06/10

 

従来機関とフィンテック企業の異業種連携の可能性

日本政府が「未来投資戦略2017」の中で「今後10年間に、キャッシュレス決済比率を倍増し4割程度とすることを目指す」という数値目標を掲げてから約2年。2019年現在では、家計簿アプリや割り勘アプリなど、既存の金融サービスにフィンテックを融合させる異業種連携の動きが活発化しています。従来の金融機関とフィンテック企業のオープンイノベーションによって、金融サービスの利便性はどのように向上するのでしょうか。

フィンテック企業が進める異業種連携とは

金融サービスに最新のテクノロジーを融合させたフィンテックが誕生した当初、フィンテックを活用した新サービスは将来的に従来の金融機関にとって代わる存在になることが予想されていました。しかし、フィンテック企業は従来の金融機関が持つ相補的な強みに注目し、金融機関と顧客を取り合うのではなく、共生していく関係を模索し始めていると言います。

利用者が求めているのは、即時性があり、手数料も安く、利便性の高い金融サービス。フィンテック企業は利用者視点でシステムを構築することにより、利用者が従来の金融機関に持っていた不満を解消することに成功しました。しかし、利用者が金融機関に寄せる信頼は依然として強大であり、フィンテック企業が多くの顧客データを蓄積して新たなイノベーションにつなげるためには、従来機関とパートナーシップを結び、顧客の信頼を維持しながら革新を推進することが重要であると考えられているのです。

ITを専門とするフィンテック企業と金融機関などの異業種が連携することには、利用者との距離を縮める以外にもさまざまなメリットがあります。それはグローバルでの競争に対応しやすくなるという点です。海外では、大企業が膨大な量のデータを保有し、支払いなどの個人情報に注目することでサービスの幅を広げていますが、そんな企業と競争するためには、日本国内のさまざまな業種が顧客のデータを共有しながら、一緒にサービスを作っていく必要があるでしょう。

サービス充実のために不可欠なオープンAPI

従来の金融機関と、フィンテック企業をつなぐ役割を担っているのがAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)です。APIは、アプリケーションの機能や管理するデータを他のアプリケーションから呼び出して利用するための仕組みであり、その仕様を外部の企業に公開することを「オープンAPI」といいます。

オープンAPIの登場以前に開発された家計簿アプリなどは、サービスを提供するフィンテック企業が、利用者の同意を得て銀行のシステムに直接ログインし、利用者のデータを取得することで連携を取っていました。しかし、この方法には、フィンテック企業が利用者の高度な個人情報であるインターネットバンキングのログインIDやパスワードを預かるというセキュリティ上の課題があり、フィンテック企業が自社のサービスを充実させる上で足かせとなっていたのが事実です。

オープンAPIによるデータ連携では、利用者自身が銀行のシステムを通して利用したいサービスに対してデータ連携の許可を与えることが可能になり、ログインIDやパスワードをサービス提供事業者に預けることなく、口座の入出金の明細照会や振り込みの指示などの機能を利用することができます。フィンテック企業がオープンAPIを通して金融機関と連携すれば、利用者にとってより安全で、便利な金融サービスが提供できるでしょう。

有益なコラボレーションが異業種連携の鍵

フィンテック企業と異業種が連携し、ネットショッピングや預貯金などの日常の行動に結び付く形でデータ分析をすれば、利用者の日常行動に合わせたより精度の高いサービスを提供できるようになります。また、フィンテック企業が金融サービスとは直接関係のない個人のお金のやりとりを仲介することで、割り勘の煩雑さをキャッシュレスで解決するなど、フィンテックの活躍の場は拡大していくでしょう。

異業種連携はフィンテック企業だけでなく、従来の金融機関にとってもメリットがあります。異業種が蓄積したデータは、金融機関のブランディングやマーケティングの判断材料としても活用できます。金融機関が顧客との接点を口座以外で持つことができれば、例えば旅行資金を貯めている利用者に向けて、旅行関連企業と手を組んだサービスを提案するなどの、新しい協業も不可能ではありません。

データの分析も人の手からAIに渡り、経験則では想定できなかった相関関係まで分析することが可能になっています。フィンテックで成功している企業は異業種連携を成功させているだけに、いかに有益なパートナーシップを結び、シナジーを生み出すかが今後の社会においても重要な点となるでしょう。従来のやり方に捉われない異業種の提携が、便利な新サービスを生み出すための次の一歩になるのかもしれません。そうすれば、利用者にとってもサービスの選択の幅が広がることでしょう。

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2019/06/10 更新

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