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BYODによる働き方の多様化と企業に求められる管理体制

2019/06/24

 

BYODによる働き方の多様化と企業に求められる管理体制

従業員が業務で使うPCやスマートフォンなどのデバイスは、端末のスペックやセキュリティを担保するうえでも、企業から支給するのが一般的でした。しかし、最近では個人所有のデバイスを業務にも使用する“BYOD(自分のデバイスを持ち込んでの業務)”を認める企業が増えています。企業が新しい制度を整備してまで個人のデバイスの利用を進めるのにはどのような背景があるのでしょうか。

働き方の多様化で生まれた“デバイスの自由化”

企業が規定するルールに基づき、個人で所有する端末を業務にも利用することを、“Bring Your Own Device”の頭文字をとって“BYOD”と言います。個人端末の業務利用を情報漏洩のリスクがつきまとうという理由によって、使用はおろかオフィスへの持ち込みさえ禁じる企業もあります。しかし、最近ではスタートアップ企業や中小企業を中心にBYODを導入する動きが活発化しています。

近年、スマートデバイスの性能は加速度的に向上しており、買い替えのタイミングによっては、会社で支給するデバイスよりも、個人が所有している端末の方が処理速度や使い勝手の面で優れることも珍しくありません。個人の私物で十分に仕事がこなせる現状を考えると、わざわざ操作性の異なる端末を複数持ち歩くより、使い慣れたデバイスを業務に活用した方が合理的と言えます。BYODを導入すれば、オフィスでも自宅でも自身の所有するデバイスで業務を進めることができることから、業務効率向上と働き方の多様化につながることが考えられます。

時間や場所を選ばず作業ができることはBYOD導入の大きなメリットですが、裏を返せば、BYODによって業務時間が際限なく拡大する危険もあります。BYODを正しく活用するためには、情報漏洩や従業員の長時間労働をどのようにして防ぐかを議論しなければならないでしょう。

BYODによるコスト削減とセキュリティ対策

BYODは企業にとっても、従業員にとってもメリットの多い取り組みです。企業にとっての最大のメリットは業務用デバイスを購入するコストが削減できることが挙げられます。BYODでは、デバイスを購入するのはあくまでも従業員個人であるため、企業はそのデバイスの購入にあたって従業員に所定の補助費を出すだけで済みます。また、業務に関係するハードウェアの数を最小限に抑えられるので、ソフトウェアのライセンス料や保守コストにも無駄がありません。従業員も、プライベートで使う端末を通常より安く手に入れられ、自分に合ったデバイスで仕事ができるので業務の生産性が上がります。

いいこと尽くしにも思えるBYODですが、個人所有の端末を業務にも利用すれば、端末の不適切な管理による紛失・盗難や、外部からの違法アクセスによる情報漏洩のリスクが生じることは明確です。個人端末の業務使用を認めるには、メールの送受信やファイル閲覧の際に個人端末から機密情報が流失することがないよう、それぞれの端末を管理するシステムを構築する必要があるでしょう。

具体策として、端末を紛失した場合に「その端末の所在地の確認」「端末をロックする」「端末内のデータ消去」などを遠隔操作で行えるようにしておくことが有効です。情報漏洩のリスクを軽減することは、企業の信用を保つことはもちろん、個人端末の管理がかえって従業員の負担になることを防ぐことにもつながります。BYODのメリットである、生産性向上やリモートワークへの順応、デバイスにかけるコストの削減を安全に行うために、セキュリティ対策はしっかりと講じることが重要になります。

働き方の多様化でBYODはもはや無視できない存在に

近年、個人所有のスマート端末があまりにも便利になったことを背景に、従業員が個人端末を無断で業務に持ち込む“シャドーIT”が問題化しています。従業員のシャドーITを黙認することは、情報漏洩に対するリスク管理を怠っているのと同じです。もしBYODを認めないのであれば、従業員の個人端末で社内のシステムに接続できる状態を制限し、社内ネットワークのセキュリティを強化する必要があるでしょう。

現代は業務の効率化やQOL向上の観点から、会社以外の場所で業務を行うリモートワークが働き方の1つとして認められている時代です。働き方が多様化するにつれ、仕事で使うデバイスも多様化することは間違いありませんし、それによって労働者の働き方の幅もより広がるでしょう。自分自身の端末で仕事をすることがスタンダードになる未来が訪れるのであれば、被雇用者側もBYOD導入か否かが就職先選びの1つの基準になるかもしれません。

2019/06/24 更新

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